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「悲しくてやりきれない ―JASRAC、音楽教室「潜入」に思う―

「四万六千日お暑い盛りでございます」という言葉に似あわぬ梅雨寒のこの頃、
如何お過ごしでしょうか。

このブログでもたびたび取り上げおりますJASRACの音楽教室からのレッスン演奏に関する著作権徴収に関して
次のニュースが出ました。
JASRAC、音楽教室に「潜入」2年 主婦を名乗り

なお、こちらの記事によると
・著作権法の演奏権は「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とした」ものなので音楽教室での演奏は対象外であるという音楽教室側の主張に対して「(テクニックを教えるだけの演奏ではなく)演奏会における演奏と同じ」という心証を裁判官に与えるという目的
・楽器のセールス活動に関する記録が結構あることから、非営利という主張を崩すための証拠集め
ではないかと事です。

個人的には、先の記事の「とても豪華に聞こえ、まるで演奏会の会場にいるような雰囲気を体感しました」などと言うのは、
「発表会(演奏会)のお手本」なんだから当たり前すぎて潜入する意味なんて何もないと考えますし、
それを聴く人は公衆でなく「奏者」として聴いている(そうでなかったなら、潜入者自体の意識に問題がある)ので
ナンセンスすぎると思います。
この点を弁理士の端くれらしく著作権法的見地から議論するという立ち位置もあるかともいますが、
今回は四半世紀ほどの間、公衆の面前で演奏活動を行ってきたアマチュアミュージシャンとしての経験から
一言申し上げられたらと思います。
(なお、著作権法的には、すでに出されている中山先生の意見書が納得感があるというのが私見です)

上記の記事で一番気になったのが、
「バイオリンの上級者向けコースで月に数回のレッスンを受け、成果を披露する発表会にも参加した」と言う点です。
この調査に当たった人って、
「バイオリンを上級者コースで弾けるだけの音楽教育を受けられた人で、二年間のうちに成果発表会に出られる技量を持った人」なんですよね。
バイオリンと言う楽器の特性(音程を取ることはおろか、音を伸ばすだけで一苦労)ということを考えると、相応のトレーニングを積んできた人と思われます。

先生も、せっかくの上級者が習いに来てくれたら
自分の技量や経験の中から、その人に適したものを悩みながら、選択して伝えますよね。
月に数回通ってくれたら教室のスタッフサイドも貴重な上級者として発表会にも協力して欲しいですよね。

そもそも社会人になって音楽を続けるという事は、言うほど簡単じゃありません。
日々の上達を図る練習一つ、演奏会一つ周りの協力なしでは成り立ちません。
金を払えば済むというものではなく、割に合わない仕事をしてくれている裏方もいたり、
自分の人生で得てきた学びをシェアしてくれる師匠や仲間がいるといった環境に恵まれてそのことに感謝しながら、
何とか継続していけるというものだと思います
その大変さを講師も教室のスタッフや様々な裏方の方々も知ってくれていて、
教室としてバックアップしてくれています。
(そういう意味では、今回のJASRACの音楽教室への課金は、
著作権法では保護されない講師や音楽教室のノウハウといった知的財産へのフリーライドと考えております)
だからこそ、そこにあるのは双方への敬意と感謝という思いがあって、多くの音楽教室の発表会などは成り立っています
(なお楽曲を作ってくれた作曲家の方への対価に関しては、現行の著作権法に従い楽譜の購入や演奏会の著作権料が支払われています)
その思いを共有していていると信じていた講師やスタッフさんとの2年もの時間を踏みにじらせたことは、たまらなく残酷だと思います。
先生にも、支えてくれる裏方にも、ひいては音楽そのものにも何の敬意も感じられない。講師やスタッフの方のお気持ちを考えると、ただただ悲しくて仕方ありません。


なお、こちらをみると、
潜入されたかたは当該行為が正当であると感じられているとの事です。
演奏権の範囲に議論があるのが本件訴訟のスタートなので、
一方的に正当性を押し通すのは強引な気もします。
潜入された方による「私は私の任務を全うしただけ」という発言が、
”業務命令でやむを得ず”という事でなく、本心からであったならば、
定水準以上の音楽教育を受けた方であって、かつ音楽著作権を管理する団体において御仕事がされている方の言葉として
演奏ノウハウを教示してくれた講師に対するものとして
発表会へのサポートとしてくれた音楽教室のスタッフに対するものとして
共演された他の生徒さんに対するものとして
こちらも悲しくて仕方ありません。

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映画だったら、音楽への愛を取り戻して、発表会や裁判の場で雇い主に反旗を翻させるのですが…)
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プロフィール

春来亭小龍

Author:春来亭小龍
メーカー勤務の弁理士です。
落語家ならぬ知財業界の落伍者です。
おっさんです。
万年ダイエッターかつ万年婚活中です。

日本弁理士会と日本口琴協会に所属しています。
趣味でジャズサックスと倍音楽器(ディジュリドゥ、口琴)とPalmTopMusic(DS&ipad)をやっています。

美人と音楽と御酒が好きです。
ブスとバカと仕事が嫌いです。

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